「(浮かれ踊りながら)はじめて~の~フェラ~君のフェラ~」
「(この世のすべてを恨んだような視線で見上げて)今日はご機嫌チンポね、キテレツ」
「もちろんさ、ぼくが手なぐさみにというより持ち前の外見上の不備と、それに勝る陰湿な性格から婦女子に疎遠であるところの自分を性的に慰めるために製造した、主に男性の性処理を存在の根源的目標とする、またその創造者の言語化されない事実を無意識的に感じ取っており、自己存在の本質的意義に懊悩・絶望していながら、その解決を自分の内面にではなく外部の現実に求めるゆえに、社会性の欠如と潜在的犯罪者の資質を充全にかねそなえてしまったロボット、輪姦女(コロスケ、と読む)! 今日ほどハッピーな日はぼくのこれまでの人生において無かったくらいさ! なんたってあの堅物女の三四(ミヨ、と読む)がぼくの昼夜を問わぬ――例えば彼女の靴箱の中にB5大学ノートにびっしりと隙なく文字を埋めたラブレターをそっと毎日放置しておいたり、彼女の愛犬の犬小屋に彼女が犬公を散歩に連れ出したすきをみはからって毒マムシをそっと毎日放置しておいたり、彼女が毎日何時に風呂に入り何時に食事をし何時に就寝するかなどのイベントを緻密なタイムテーブルにして彼女の机にそっと毎日放置しておいたりさ――猛烈なアタックについに今日泣きはらした目を弱々しく伏せて『…一日だけ、一日だけおつきあいしてあげるから、だからもう私につきまとわないで下さい。お願いだから』と発言しやがったんだ! (ポケットからカセットを取り出して再生する)『一日だけおつきあい一日だけおつきあい一日だけおつきあい一日だけおつきあい……』キッヒーッ! たまらねえぜ! (床をごろごろと転げ回る。舌でカセットテープをなめ回し顔面を輪姦女に接近させて)言質を取るってのはこういうふうにしてやるんだよ、輪姦女! 『一日だけおつきあい一日だけおつきあい一日だけおつきあい一日だけおつきあい……』キッヒーッ!(床をごろごろと転げ回る) おつきあい、なんて語義の曖昧な言葉だろうねえ! こりゃもうどこまで行くか俺自身にも正直わからんぜ…(眼鏡に取り付けられた天体望遠鏡風の筒が左右連動しない動きで高速に伸縮を繰り返す)ククク…この奇天裂傷アナル斎様の残してくれた赤外線バイザーさえあれば婦女子も薄布一枚で街を無防備に闊歩する夏に向けて、もう圧倒的勝利は約束されたようなものだ! …ッざけるなぁぁぁぁぁぁぁッ! (突然激昂して棚のステレオを担ぎ上げると二階の窓から通りにめがけて放り投げる。窓ガラスの割れるけたたましい音。悲鳴。血走った目で)一日だと、一日ですむと思ってんのか、一日くらいで母親に虐待され続けて女性全般に転移した憎悪からの変態サド性愛をもてあます俺が満足すると思ってんのか、あのアマ! (怒りのあまり鼻血を吹く。が、腕時計を見て突然陽気に)おっともう出かけないと。あんまり三四を待たせてもいけないしな…放置プレイの趣味はねえんだ。キヒヒ。それじゃあな、輪姦女。(行きかける。が、突然振り返り輪姦女にすれすれまで顔面を接近させて臭い息をはきかけながら)今日でおまえは用済みだ! ヒヒヒ、帰ってきたらスクラップにしてやんぜ? (浮かれ踊りながら)はじめて~のフェラ~君のフェラ~(部屋から出ていく)」
「(両手で顔をおおう)おお、三四殿、かわいそうな三四殿……あんな異常者の手にかかって華やかな青春の幕を閉じることになるなんてチンポ。しかし一介の性処理ロボットに過ぎない我が輩に何がしてやれるというでチンポ…(部屋の中央にくずおれる。が、しばらくして身体を起こし)そうでチンポ! 我が輩が三四の処女性をキテレツより先に終焉させてやればいいのでチンポ! (頭頂部に手をやり)これはちょんまげといったような我が輩にある種のキャラクターと時代性を添付・象徴させるための演劇的小道具なんて生やさしいものじゃなく、VHSが勝利した理由であるところの性的要素に勝れば全体において勝るという人間存在の崇高さを完膚無きまでに踏みにじる冷徹なマーケティング理論に鑑み各社のゲーム機のコントローラーが現在残らず持つにいたっているところのバイブレーション機能を搭載した特別あつらえの張り形なのでチンポ。これを使えば最大で阪神大震災レベルの振動を三四殿の膣内に発生させることが可能でチンポ。毒は毒をもって制す、最悪の事態を回避するために仕方のないことでチンポ…三四殿、いま行くでチンポ(部屋から出ていく)」
「(通行者をいっさい眼中に入れないやりかたで通りの中央をねり歩きながら)おお、あそこに見えるは母親が人類外の生物と交接して生まれたとご近所でもっぱらの評判の遺伝子配列に異常を予感させる風貌のブタゴリラと、余った皮が先端部分にドリル状に凝縮したチンポを持つと学校でもっぱらの評判のトンガリチンポでチンポ。おぉい、我が輩でチンポ、ここでチンポ!」
「(左とん平の扮する猪八戒をさらに太らせ、思いきり毛深くしたような容貌で振り返り脳言語野と発声器官に致命的な欠陥を感じさせる声で)$◆□、☆↑↓○〈#%□■※→→◇(腹を抱えて爆笑する)」
「(顔を真っ赤にし両手で股間を隠して)ねえ、いま包茎って言った? 包茎って言わなかった?」
「二人ともそれどころではないでチンポ。三四殿がたいへんなのでチンポ」
「(両こぶしで分厚い胸板を交互に叩いて)◇→〒※■△□£!? %$#&▲、▽*@※↑↑↑!!」
「(顔を真っ赤にし両手で股間を隠して)いいや、その目は包茎だって思ってる目だ、言わなくたってぼくにはわかるんだから!」
「ブタゴリラは話が早いでチンポ。トンガリチンポもいっしょに行くでチンポよ。OK?」
「↑#&→◇※■※$&%£▲!!(マンホールのふたを持ち上げる)」
「あっ。言った、言ったよ、いま言ったよ! (顔を真っ赤にして涙ぐんで)ぼッ、ぼくのことを包茎って言うなぁッ!」
「(突如遠くから)きゃああああああっ」
「あの悲鳴は三四殿の!(駆け出す)」
「↑#£▲!(後を追う)」
「(手で両耳をおさえてうずくまりながら)包茎って言うなぁッ! 包茎って言うなぁッ! 包茎って言うなよぉッ!(大声で叫び続けるトンガリチンポの周囲に人が集まってくる)」
「(ぐったりと地面に横になった三四を見下ろし手に持っている血のついたレンガを後ろに放り捨てる)ごめんよ、君があんまり熱烈にぼくを見つめるものだから。ぼくは他人の視線にさらされることに非常な恐怖を感じる性質なんだ…さて、しかしこれからどうしたものか。やれやれ、ぼくが今までプレイしてきた無数の恋愛ゲームの中にも暮れていく人気の無い公園で女の子の後頭部を落ちていたレンガで強打したあとどうするかなんてシチュエーションはなかったしな」
「(夕日をバックに)もうやめるでチンポ、キテレツ」
「(びくりと肩をふるわせる。振り返り)は…はははっ、誰かと思えば輪姦女じゃないか。どうしたい、スクラップにされるのを待ちきれずぼくの後を追いかけてきたのか。そうだろうそうだろう、自分である意識を喪失してこの世から消滅するというのはこの上ない快感だろうからな! けどそれはぼくがこの三四という人間の肉体と人格を完全に蹂躙することで両親に与えられた世界への憎悪をすっかり解消してしまったあとのことだ…(再び三四に向き直る)」
「無駄でチンポ。キテレツを勃起させる現実はどこにも存在しないでチンポ。ただキテレツが創り出した、現実に対抗するファンタジーである我が輩をのぞいてはね。チンポ」
「そんな、そんなはずが…(ズボンを下ろして)くそっ、くそっ! 立て、立てよ! ちくしょう! (やがてがっくりと首をうなだれて)やっぱりぼくにはギャルゲーしかないのか。ぼくは一生ギャルゲーをやり続けるしかないのか…(落涙する)」
「キテレツ…(キテレツの肩を抱く)」
「(顔をあげて涙をぬぐうと晴れやかに)わかったよ、いまぼくは自分の求めるものがわかった。ぼくにはやっぱりギャルゲーしかないんだ。それがわかっただけでも今日という日には意味があった。それに、ギャルゲーもそんなに悪いものじゃないさ。さぁ帰ろう、輪姦女。ぼくたちの家へ」
「(憐れみの表情で)そうはいかないでチンポよ…」
輪姦女の後ろに立つ二人の警官。逃げ出そうとするキテレツ。が、すぐさま地面に押さえつけられ後ろ手にぴかぴかする銀色の手錠をはめられる。連行されるキテレツ。泣きはらした目に憎悪をこめてにらみつける三四の母親。走り出すパトカー。併走する黄色い救急車には猿ぐつわと拘束具を身につけたトンガリチンポが乗っている。併走する保健所の車には乱杭歯を剥きだしにして鉄柵にしがみつくブタゴリラが乗っている。陽の落ちた公園。小学生が工作の時間につくったような段ボール製のロボットが放置され、街灯に照らされている。毛の抜け落ちた痩せた犬が一匹やってきて、その上に小便をする。